2023.11.09 更新日: 2024.10.08
人材育成のための教育ツールとして確実にビジネスの世界に広まってきているeラーニング。
企業によって活用法は様々ありますが、あなたの会社では効果的に活用できているでしょうか?
自社課題に対して最適な形でeラーニングを活用するには、
・誰(どの部門)が主管なのか
・どんなテーマか
・対象は誰か
以上のようにしっかりと目的に合わせて最適化した教育プランを練る必要があります。
そこで今回のテーマは、eラーニングシステムを導入している業界や企業の活用事例をご紹介。
実際に活用されている業界を知ることができれば、自社課題や目的のヒントを得られます。
理想の人材に必要な教育を確認し、具体的なカリキュラム選定を行うことで、無駄なく簡単に、精度の高い教育プランを作り上げ、会社の将来を担う次世代リーダーの育成の参考にしてください。
地方自治体や宮内庁といった各機関において、職員の学習機会の充実は組織への定着の重要なカギを握っています。しかし、規模の大きい政府・公共機関では、職員の時間と場所を確保することさえ困難です。そこで、職員向けの教育・講習に多く活用されているのがeラーニングです。
在職中はもちろんのこと、出産・育児・介護などで休職中の職員に対するサポートとしてもeラーニングが活用されており、業務に必要な最新の知識を学べると共に、持っていたスキルを衰えさせることなく復職ができるよう後押ししています。
また、eラーニングを活用した行政サービスにも注目です。
例えば、生涯学習の一環としてeラーニングを用いた学びの場を市民に提供したり、自治や税に関わる制度の解説動画を配信したりなど。組織の中だけで利用するのではなく、外部に発信していくツールとしても活用されています。
尚、国が関わる機関であるためセキュリティには特に厳重であり、どのeラーニングシステムでも良いというわけではありません。セキュリティを重視した信頼のおけるeラーニングシステムの導入がなされていることが前提にあります。
医療機関においても、職員のスキル向上や質の高い医療を提供するための研修が欠かせません。
しかし職員すべての集合研修を、一括で実現させるのは現実的ではないでしょう。
eラーニングであれば、職場環境や多様化する職員に合わせた研修が可能になります。
医療機関でのeラーニング活用のポイントとしては、
・実用性の高いコンテンツが提供されているか?
・すべての職員に受講環境(端末)を用意できるか
・職員にとって無理のない、学習機会を提供できるか
自院でコンテンツが準備できないケースもあると思います。
その場合は、医療機関向けにコンテンツをそろえているようなサービスの導入を検討することも一つです。
例えば、基礎学習コース、看護共有コース、病院経営・マネジメントコースなど、セクションやニーズに合わせて多彩なコースが用意されています。
しかし、何よりも大事なのは実用性です。
基礎知識を取り込み、事例を確認し、動画講座で学ぶことももちろん大切です。
加えて、自院で起こったインシデントの事例動画を用意し、疑似体験、自分事として体験することで、より効果を生むことができます。
医療業界では、このように様々な学習法ができるeラーニングで、職員の育成に力をいれています。
福祉業界に従事する職員は、年に一定の研修を受講することが国より義務付けられています。
多忙な業務の中、すべての職員に研修を提供しなければならないのです。
ただでさえ、職員の離職率が高く、育成が進まずマネジメント層が育たない、といった課題が多いため、このような課題解決の手段としてもeラーニングの活用は有効と考え、導入が増えています。
具体的な活用法としては、障がい者を支援するうえで必要となる知識をeラーニングのコンテンツ動画で学ぶ内容が主になります。
また、日常の支援で「こんな場合はどうしたらいいの?」とつまずいた時、ケースバイケースを多様に揃えたコンテンツの中から実際に適切な支援を自ら選択し、実践できるようサポートしています。
これも、簡単にアクセスができるeラーニングだからこそ、継続的に学んでいける仕組みとなっています。
このように、 障がい者支援施設や、障がいのある方々と直接かかわる職員・社員はもちろん、それらのスタッフをマネジメントしている管理者の人材育成やサービスの質の向上が、より図られるようになってきているため、ますます受講環境の整備は必要になってくるでしょう。
大学や塾における講義形式の授業は、学生の理解度に差が出る上に、その状況を逐一把握することは困難です。
そこでe-ラーニングで予習し、授業で実践する手法が勧められています。
実技や実験、討論に時間を割きたい講義には特に効果的です。宿題や復習にはテスト機能を使えば、結果がデータとして残り個々の理解度も把握できます。
また、就職活動で役立つスキルを身につけることを目的として、就職課がeラーニングシステムを導入するという事例もあるように、授業以外のシーンにおいても活用されています。
一方、教職員に対しても、指導方法の提案や最新知識の提供を通じて、より質の高い授業の実現に貢献しています。
政府が打ち出したギガスクール構想の影響もあり、現在国全体で教師のITリテラシー向上の取り組みを積極的に行っている所です。
私立・公立等の受講環境の違いや、市区町村の財源によっても取り組み方は異なりますが、学生の学習意欲を維持・向上させる魅力的な講義と、就職を優位に進めるスキルの獲得、そして教師への最新知識の提供。これらは教育現場の価値を高める重要な要素として、eラーニングは活用されています。
金融業界においては、専門的知識や資格関係のコンテンツが活用されています。
金融経済教育に関わる官庁と団体が連携して作成した動画教材や、中立公正な観点から金融リテラシーに関する基本的な内容を網羅しているeラーニングが多いです。
金融の基礎に関する体系的な理解や資格取得としては、金融基礎の「法務」「財務」「税務」「外為」、資格取得コースの「貸金業務取扱主任者」など、内容は多岐に渡ります。
また、近年脅威化しているサイバー攻撃などのセキュリティ対策のためにも、行員のITスキルの底上げに特化されたITリテラシーに関する研修も増えてきています。
製造・物流に特化しているeラーニング研修もあります。
内容は、基礎となる「ものづくり教育」から「旋盤」・「自動車製造」など専門的な講座などです。どの講座も文字だけではなく、イラストや実際の工場の写真を使って学習ができるので、イメージが沸きやすくなっています。また、物流は各国を跨ぐため、製造講座は英語・ポルトガル語・ベトナム語・中国語にも対応されている場合が多いです。
特に語学教育は、eラーニングが早くから活用されてきた分野です。
従来、標準的な教材コンテンツを使用する場合は双方向性に限界があるので、単語や構文の学習、確認テスト等が中心となり、学習して知識の定着を図るというスタイルが主でしたが、近年は実践性がより重視されるようになったこと、テレビ会議システムが発達したことから、講師との対面式のオンラインレッスンが増えてきているため、具体的な対策につながっています。
また、会話だけではなく、英語のビジネス文書やメールの書き方など、基本的なルールが定まっている分野であれば、教材コンテンツだけで学習することができます。
海外派遣研修を行っている企業では、現地入りの事前学習としてこれらのプログラムを実施しているところがあります。
これは、「テスト」を受けながら学習するスタイルのことです。
例えば、こちらのテストをご覧ください。
「あなたはチームを率いるリーダーです。ある日、あなたは部下から『ある同僚からパワハラされている』と相談されました。さて、あなたはどのような対応をしますか?次の選択肢から選びなさい」
そして、次の3つの選択肢があります。
「1.大ごとにしたくないので、しばらく様子を見る」「2.パワハラをしたとされる同僚をすぐに移動させる」「3.迅速に事実関係の調査を行う」
このようなテストを、動画や資料を見せずに受けてもらいます。
受講者は、「もし自分が管理者の立場だったらどうするかな?」と考えますよね。
さらに、テストの受講後に、事例について詳しく説明した「解説」を読ませます。そうすることで、受講者は、まずは「自分で正解を考え」、次に「解説で理解を深める」ことができます。
以上が「学習方式としてのテスト」でした。
「⑤学習のメリハリ」は、受講者にアクションを起こさせることで、集中力を保たせ、「⑥学習コンテンツとしてのテスト」はテストを受けながら学ぶ。
⑤⑥の両方とも、テスト自体が受講者の学習そのものに影響を与えています。
語学となれば、接客業界でも重要な学びのひとつです。
接客業界では、外国人顧客対応のため、施設スタッフの英語力強化必要不可欠です。とはいえ、英会話を一から学んでもらうのは時間もコストもかかります。
そこで、自社のサービス提供に必要な単語やフレーズだけを集中的に学習させるための教材をオリジナルで制作している企業もみられます。
もちろん、接客業に特に外せない接客マナーについても活用されています。お辞儀や挨拶のしかた一つが差別化のポイントになりうるこの業界では、独自の接客スタイルを大切にしている企業が少なくありません。こうした、ブランドイメージの体現ともいえる分野では、動画を用いて、体の動きやお客様にお声掛けする際のイントネーション、表情などを伝える教材が有用です。
このように接客業界では、語学対策や基本的なマナー、サービス等のコンテンツも多様に活用されています。
接客業とも結びつく小売業界では、オンライン研修や学習進捗管理によって社員の学習をサポートしつつ教育コストの削減に役立てています。
小売業界は店舗ごとに社員教育を行う必要があり、それにあたって人材育成にまつわる課題が発生することがあります。
その解決すべき課題とはなんなのでしょうか。
・小売業界では店舗ごとでの教育になりやすく、かつOJT中心の教育体系が多いため、教育担当者の能力や経験に依存してしまい内容にばらつきが出てしまう
・マネジメント層向けの研修が不足している場合もあり、サービスの本質を理解せず自己流のノウハウだけで教育してしまうことも多い
・小売業界では店舗が点在する場合があるため、オフラインの合同研修は開催が難しく、開催できたとしても全員の参加は困難である
・店舗数の増加に伴い従業員数が増えると、各従業員がどの講習を受けたのかを把握できず、教育状況を管理できない問題も発生する
これらの問題はeラーニングであればすべて解決します。
オンラインでいつでも受講が可能なため、忙しい小売業の現場であっても、移動時間や休憩時間を使って効率的に学習できます。
そして学習の進捗状況や理解度を管理画面で確認できるため、各店舗の教育担当者は定期的なチェックで学習進捗に遅れがないかを把握でき、その後のフィードバックも簡単になります。
また、先述の接客業界にもあるように、接客講座やクレーム対処法も学習でき、独自の動画やノウハウ資料を作成して社内共有できる機能はもちろん、定期的にリリースされる商品の基礎情報や競合製品との差別化ポイント、セールストークなどを盛り込んだ教材を店舗スタッフ向けに配信し、接客に役立てています。
このように、店舗ごとの経験やスキルを全体に流用でき、社員がスキルとして身につけるまでサポートすることで、社内人材の標準化が可能です。
接客・小売系の業界は、eラーニングの活用モデルとしては、かなり実務・実益に近い例といえるでしょう。
いかがでしたか?
一口にeラーニングといっても、業界や業界ごとの目的によって活用方法は様々ということがわかりました。
しかしいずれも、現代ビジネスの大きな課題である人材不足とグローバル化への対策に他ならず、どの施策も教育の標準化、業務の標準化、生産性の向上を目指していることが見て取れます。
今後、人材能力開発にこれまで以上の効率的かつ効果的な仕組みが求められることは確実であり、
そのために、eラーニングは単なる学習ツールではなく、ビジネス上の課題を解決するためのソリューションとして活用されていくでしょう。
あなたの会社でも、eラーニングは理想とする人材育成に貢献します。今回の内容を参考に、自社独自の教育方法を見出し、活用してみてはいかがでしょうか。