2024.03.01 更新日: 2024.10.08
目次
人材育成の手段のひとつとして市場規模が拡大しているeラーニング。
この影響はコロナ禍が大きくかかわっていることも理由のひとつですが、それ以前から始まっていました。
特にBtoB市場では、働き方改革関連法の施行による企業の業務効率化であったり、人材育成に対する投資の活性化を目的として、eラーニングの利用者数が増加したと言われています。
これらにより、自社でも導入を検討したいと考えている企業も多いのではないのでしょうか?
しかし正直なところ、始めるまでのコストが原因で導入を断念している企業も少なくはありません。
そこで、中でも中小企業に対しeラーニングの導入を政府や自治体が支援する動きがあります。
それはeラーニングシステムの導入に使える「人材開発支援助成金」というものです。
今回はその「人材開発支援助成金」をはじめとして、そのほかにも使えるeラーニング対象の助成金や、対象になる企業、申請方法などについてご紹介していきます。
※令和5年12月時点の情報であり、最新情報については各サイトをご覧ください。その際、助成期限が終了している場合がありますが、申請漏れなどについてITBeeは保証いたしかねますのでご了承ください。
人材開発支援助成金は、労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を効果的に促進するため 、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。
事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した、専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を、計画に沿って実施した場合に限ります。
従業員の職能向上や働き方改革、雇用機会の創出などに要する費用の一部を補助金として受け取ることができ、従業員のキャリア形成や能力アップはもちろんのこと、従業員の職場定着促進 、ひいては、安定的な企業運営にもつながっていきます 。
人材不足や専門性の高い業種においては、人材育成のための負担を軽減する有用な制度として期待できるでしょう。
【主な助成内容】
・新規事業の立ち上げ、デジタル人材の育成などの人材育成を支援
・新事業への進出、新商品開発やデジタル化などを応援
・高度デジタル人材の育成、サブスクなどに助成金を支給
→詳しくは■eラーニングを対象とした補助金・助成金の種類をご紹介
にてご説明します。
【主な受給要件】
人材開発支援助成金は、これまで「対面」による訓練が原則だったところ、令和4年4月から通信制とeラーニングによる訓練にも助成金が支給されることとなりました。
これにより、訓練の時間がとれないなどの悩みを抱えている事業主も、通信制の教育やeラーニング などであれば、 訓練を実施しやすくなったといえます。
しかし助成金を活用できる事業主等や支給対象訓練についてはさまざまな要件があり、人材育成への積極的な取り組みは、OJT、OFF-JT、eラーニングなどの研修方法に応じて、助成金の額なども異なる為、詳しく見ていきましょう。
【主な助成内容】
通信制・eラーニングによる訓練の助成対象訓練時間は、実際の訓練時間ではなく、受講案内等に記載されている「標準学習期間」や「標準学習時間」で判断します。
計画提出時に必要な訓練時間は
であることが必要です。
【修了証明要件】
通信制・eラーニングによる訓練の場合には、訓練機関が発行する
などの書類により訓練が修了していることを確認します。
【計画提出・支給申請】
訓練の「計画提出」は受講開始の1ヶ月前までに提出、訓練修了後の「支給申請」は修了の日の翌日から2か月以内に提出する必要があります。
計画提出・申請に関しての詳細は各都道府県の労働局へお問い合わせください。
以下では対象とならない訓練内容をご紹介します。
(例)普通自動車(自動二輪車)運転免許の取得のための講習 等
(例)接遇・マナー講習 等 社会人としての基礎的なスキルを習得するための講習 等
(例)日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習、話し方教室 等
(例)
(例)時局講演会、学会、研究発表会、博覧会、見本市、見学会 等
(例)労働安全衛生法に基づく講習(法定義務のある特別教育等)等
(例)意識改革研修、モラール向上研修 等
(通信制による訓練等の場合に限る。)
(e ラーニングによる訓練等及び通信制による訓練等に限る。)
(e ラーニングによる訓練等及び通信制による訓練等を除く。)
(海外研修、 洋上セミナー など)
(事務所、営業店舗、工場、関連企業 取引先含む勤務先等 、または就労の場で行われるもの)
(例) 現場実習、営業同行トレーニング など
[主な例]
助成の留意点や対象外となる訓練内容がわかったところで、自社が支援の対象かどうか確認してみましょう。
この項目では人材開発支援助成金をはじめとし、その他にもeラーニングを対象とした助成金の4つの事業をご紹介します。
まず、人材開発支援助成金には7つのコースがありますが、そのうちeラーニングが対象になるのは、
以上の3つです。
eラーニングの場合、経費のみが助成対象となります。以下で詳しく説明します。
①人材開発支援助成金;人への投資促進コース
人への投資促進コースは、職場のDX推進や、IT分野未経験者が即戦力となるためのIT教育などに役立つほか、 定額受け放題サービスの研修、従業員の学び直し支援などにも活用できます。
従業員は正規・非正規雇用(アルバイト・パートを含む)を問わず対象となります。中でも、特にeラーニングに活用しやすいのが定額受け放題の研修サービス、いわゆるサブスク型の研修を対象とした「定額制訓練」です。新入社員研修にも適用できるため、積極的に活用しましょう。
【定額制訓練】
定額制訓練とは、定額受け放題研修サービス(サブスクリプション)による訓練です。
【定額制訓練の対象と要件】
対象となる訓練:定額制サービスによる研修(業務上必要または義務付けられている内容のものに限る)
申請に必要な条件:
経費助成率:中小企業45% 大企業30%
※賃金要件または資格等手当要件を満たした場合、さらに+15%
支給対象となる経費:基本料金+オプション経費
(例:初期設定費用、アカウント料、管理者ID付与料金など)
※タブレット・ルーターのレンタル、LMSの入力代行サービスなど、 訓練に直接要する経費以外は対象外
定額制訓練は職務に関連する訓練が対象となっていますが、新入社員、中堅職員、管理者など、入社時・昇級時などの時期に実施される訓練については、業務に必要なものとみなされ、支給対象となります。
それだけではなくこれから業務で必要になるであろう内容を申請対象として出すことも可能です。
人への投資促進コースには、その他にも以下の5種類があります。いずれもeラーニングによる訓練が対象に含まれます。
●高度デジタル人材訓練
DX推進や成長分野などでのイノベーションを推進する高度人材を育成するためのコース。
ITスキル標準(ITSS)レベル3、4以上等の資格試験等を受験する際に申請できる訓練。
●成長分野等人材訓練
DX推進や成長分野などでのイノベーションを推進する高度人材を育成するためのコース。
大学院での高度な訓練が必要。海外の大学院での訓練も対象になる。
●情報技術分野認定実習併用職業訓練
IT分野未経験者に対する、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練
●自発的職業能力開発訓練
労働者の自発的な職業能力開発のための訓練
●長期教育訓練休暇等制度
社内制度で教育訓練休暇制度や教育訓練短時間勤務等制度を導入し、労働者の自発的な職業能力開発を促進した場合の助成
②人材開発支援助成金;人材育成支援コース
人材育成支援コースは、職務に関係する訓練のほか、管理職研修または新入社員教育や、非正規雇用社員の正社員化を目指す訓練等が対象となります。人材育成支援コースには、以下の3つがあります。
●人材育成訓練
職務に関連した知識や技能を習得させるためのOFF-JT訓練
●認定実習併用職業訓練
主に新入社員が対象で、中核人材を育てるために実施する、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練
●有期実習型訓練
正社員への転換を目的として実施する、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練
eラーニングの場合、最大70%、15万円を上限に経費助成が行われます。また、従業員の賃金を向上させた事業主に対しては、助成額が上乗せされます。
③人材開発支援助成金;事業展開等リスキリング支援コース
事業展開等リスキリング支援コースは、事業展開やDX等のため、新たな分野についての訓練を行う際に活用できます。
対象となるのは、事業展開にあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識の訓練、または事業展開は行わないが、DX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合、関連する業務に必要となる専門的な知識の訓練です。
eラーニングの場合、最大75%を上限に経費助成が行われます。育休中の従業員についても、自発的に受講を希望した場合は、助成の対象となります。
これら人材開発支援助成金を使用したい場合は、研修開始日の一ヶ月以上前からの準備が必要です。コースごとに要件や申請方法が異なりますので、詳細は厚生労働省HPの最新情報をご確認ください。
参考)厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
東京都産業労働局は、新型コロナ禍で多くの企業で休業や在宅勤務が続く状況を受け、2020年4月に、中小企業人材オンラインスキルアップ支援事業を開始しました。この事業は一部内容を変更し、オンラインスキルアップ助成金として継続して募集が行われています(2023年5月時点)。
内容は、民間の教育機関やサービス提供会社等が提供するeラーニングの利用について、受講料などの経費が助成されるというものです。
オンラインスキルアップ助成金とはどのような助成金なのか、ポイントを以下にまとめます。
助成金を受けられる要件は以下のとおりです。
さらに、中小企業のうち、以下に該当する小規模企業者については、助成金の額や割合がさらに多くなります。
//図or写真が入ります出典)「令和5年度オンラインスキルアップ助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)」,『公益財団法人 東京しごと財団』
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/online.htmlオンラインスキルアップ助成金は、先述のとおり、業務を行う上で必要となる知識やスキル・資格の取得を目的とすることが、助成の要件とされています。
助成を受けるには、対象の訓練をすべて終了し、実績報告書を提出する必要があります。報告書をもとに受講状況や支払い実績の審査があり、それらがすべて完了してから助成金が支給されます。eラーニングを申し込む前に、その訓練が助成の対象となるかどうかを相談するといいでしょう。
また、受講するeラーニングは、受講案内と受講料等がホームページやパンフレット等で一般に公開されている必要があります。
※オーダーメイドでセッティングした研修内容は申請が通らないのでご注意ください。
申請は交付申請→交付決定→実績報告の3段階で行います。
まずは交付申請書を作成し、その他の提出書類とあわせて申請期間中に公益財団法人東京しごと財団まで郵送します。申請期間は年度内(※)に6回設けられています。助成を受けたいeラーニングの実施日等に合わせて申請しましょう。
※4月1日~翌年3月31日まで
対象となる中小企業の条件や助成対象となるeラーニングの要件、申請など、詳細は公益財団法人東京しごと財団のサイトにて最新情報を確認してください。
参考)東京都産業労働局、「東京都中小企業職業訓練助成制度」,『TOKYOはたらくネット』,https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/online.html
ものづくり補助金とは、中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施する、令和元年度、令和2年度及び令和3年度補正予算「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助事業」により、事務局である全国中小企業団体中央会が管理・運用しています。
詳しい補助金の仕組みなどは以下をご参照いただきますが、eラーニングの導入で申請する際には以下要件を満たせるかがポイントとなります。綿密な事業計画が必要となり、満たせない場合は返還を求められる為、十分に注意しましょう。
中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、
中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援します。
以下の要件を全て満たす3~5年の事業計画を策定すること
本事業の補助対象者は、日本国内に本社及び補助事業の実施場所を有する以下の1~6のいずれかの要件を満たすものに限ります。
本事業の申請は、GビズID(アカウント)を取得のうえ、電子申請システムにより申請いただきます。GビズIDプライムアカウントの発行には、一定期間を要しますので、早めの準備が必要です。
(参考)
GビズID についてhttps://gbiz-id.go.jp/top/
jGrants についてhttps://www.jgrants-portal.go.jp
参考)ものづくり助成金総合サイト https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html
雇用調整助成金とは、経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業および教育訓練により労働者の雇用の維持を図る場合に、休業手当、賃金の一部が助成されるというものです。
新型コロナの影響で特例措置が設けられ、その中で初めて、教育訓練の内容にeラーニングが加わりました。
オンラインスキルアップ助成金と違い、eラーニングの導入が主目的というわけではありませんが、条件を満たしていれば以下の助成金を申請することができます。
なお、申請期限は「支給対象期間」の最終日の翌日から起算して2カ月以内です。
参考)厚生労働省「雇用調整助成金 ガイドブック(簡易版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000783188.pdf
以上、eラーニングで活用できる助成金についてご紹介してきました。
今は多くの企業がさまざまなeラーニングのサービスを提供していて、何を基準に選定していいのか迷うことも多いでしょう。
eラーニングの一覧を比較する前に、まずは自社の要件を明確にし、自社の経営目標や課題に対して教育施策がどのように関与できるかを整理してみることから始め、それが満たされるサービスを検討しましょう。
次に、その教育を受けるべき対象者をピックアップし、登録ユーザー数として想定します。
教材の準備の仕方には、
これらの4パターンがあり、それぞれ検討方法が異なるのでチェックしてみてください。
eラーニングの導入はスタンダードとなりつつあり、政府や自治体でも導入による積極的な教育、人材開発の支援を行っていることが、今回の内容で分かりました。
働く場所がどこであっても、人材育成の必要性、重要性は変わることがないということですね。
また、これら助成金の財源は企業が支払う雇用保険料です。支払うだけではなく積極的に活用し、eラーニングと共に企業成長の要である人材教育に力を注いでみてはいかがでしょうか。